小児科 すこやかアレルギークリニック

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栗アレルギー
2010/10/16
最近、新患の患者さんが多いように感じます。

開院して3年。少ないと新患の患者さんが1人だけの日もありましたが、最近はコンスタントに3〜5人は受診があるように思います。市外からも少なくなく、それまで何件も小児科を渡り歩いているケースもあり、自然と力が入ります。

先日、受診されたお子さんはカニを食べると口の周りが赤くなるというのが受診理由でした。普通なら「カニアレルギーだから、カニは食べないように」との一言で終わることもあるでしょうし、アレルギー検査をする場合もあるでしょう。

カニは甲殻類なので、エビとは共通の抗原を持つため、エビは食べているかどうかも聞かなければなりませんし、イカ、タコなどの軟体類についても聞いてみる必要があります。摂取状況を聞いてみると、あまり好きではないようです。もしかしたら、これらにもアレルギーがあって、身の危険を感じて食べないのかもしれません。

家族歴で花粉症がありましたので、ダニ、花粉も加えた、甲殻類、軟体類、貝類のアレルギー検査をさせて頂くことにしました。

私の方針としては、この検査の結果でカニが陽性であっても「本当にカニが原因だろうか?」と考えて、精査を行おうと思っています。アレルギー専門として期待して受診されている訳ですから、いい加減なことはできないと思っています。もし食べられるのに、私が「食べない方がいい」と言ってしまったら、患者さんは怖がって一生食べないかもしれません。

ご存知のように、カニは大人のアレルゲンなので、大人でカニアレルギーがあると食べるのは困難でしょう。ですから、安易なことをいう医師も多いでしょうが、私は安易なことを言ってはならないと考えています。カニはもちろん、場合によっては、あまり食べたがらないエビ、軟体類も「食物負荷試験」をやらないといけないかもしれません。

さて、タイトルの栗アレルギーの話がなかなか出てこないなとお思いかもしれません。実は、当院の問診票では、親のアレルギー歴を聞いています。母が栗アレルギーがあると書いてありました。栗も立派なアレルゲンになりますが、一般的には子どもではなかなかお目にかかれないかなと思います。

栗と聞いて、もしやと思い、「ラテックスは大丈夫?」と聞いてみると、ラテックスアレルギーもあるようです。ラテックスとは、天然ゴムの成分です。アレルギー専門医の間では、歯科医や外科系の医療関係者に多いと言われています。予想通り、お母さんは看護師さんでした。

種明かしをすると、ラテックスアレルギーがあると、ラテックスと似た成分を持つ栗、桃、メロンなどのフルーツにも反応してしまうのです。似た成分にも反応してしまうことを交差反応というのですが、より共通部分の多い栗やアボガドとは強く反応し、共通部分が少なくなると、重症者ほど合併しやすいようです。ラテックスとフルーツにアレルギー症状が出てしまうことをラテックス・フルーツ症候群と言います。

お母さんの場合、内科の先生が時間をかけて究明してくれたようです。大人の食物アレルギーは内科医が相談に乗ることが多いでしょうが、食物アレルギーに詳しい先生は少ないと思われます。この病気の存在を知ってさえいれば、あっさり解明できてしまいます。

別の患者さんで、お子さんがかかった時に、そのお母さんもカキ(牡蠣)でアナフィラキシーを起こしたことがあったとお聞きしました。

内科の先生に相談したら、「アナフィラキシーは2時間経ってから症状が出るので、慌てなくてもゆっくり対応できる」なんてことを言われたそうです。申し訳ないですが、勘違いされているようです。食物アレルギーは、一般的に2時間以内にアレルギー症状を起こすものを指しますが、その多くが食べている最中から30分以内に症状が出ます。ましてやアナフィラキシーなら、一大事です。そんな悠長なことを言っていられないのです。

当院は、基本的には大人のアレルギーであるぜんそく、アトピー性皮膚炎の受診はお断りしています。成人の患者さんを診ることで、本来私が診るべきアレルギーの重いお子さんを診る時間が取れなくなれば、本末転倒だからです。ぜんそくなら呼吸器内科、アトピーなら皮膚科の先生という受け皿があります。ただし、今回の話のように食物アレルギーとなると、受け皿が見当たりません。

大人の食物アレルギーで困っている方がいらっしゃれば、対応しなければならないと思っています。私が何でも診られると言う訳ではありませんが、それなりの知識は持っているつもりですので、大人の方でもご相談頂ければと思っています。

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